プロレス技は千差万別です。
使い手が変われば、同じ技でも名前が変わります。
ウェスタン・ラリアットなんてその最右翼ですね。
さて今回紹介するプロレス技はこちらになります。
ウェスタン・ラリアット
(WESTERN LARIAT)
歴史
前説でも毎回紹介している説明が不要なくらいに有名な技です。
発明者は ”不沈艦”スタン・ハンセン さんです。
基本形は まず相手をロープへ振って、戻ってくる所へ正面からやや斜めに一気に走り込み、相手とぶつかる瞬間に、自分の腕を横に伸ばしたまま思いっきり相手の喉元めがけて水平に振り抜きます。
めちゃめちゃシンプルかつ説得力のある技です。
起源はアメリカン・フットボール(の反則技?)だそうですね。
スタン・ハンセンさんはプロだったアメリカン・フットボール選手だった経験を活かして、オリジナル・ホールドへと変化させました。
ちょっとビックリしましたけど、プロフットボウラーを解雇された後、教職についていたんだそうです。
かなり驚きですよね。
話がそれました、この技は色々な派生技、呼び名がありますが、それは後に回します。
この技の最も有名なエピソードは、1976年4月26日に当時のプロレスの殿堂、マジソン・スクエア・ガーデン(MSG)で行われた、当時のWWWF(現WWE)ヘビー級王者 ”人間発電所”ブルーノ・サンマルチノ さんとの一戦です。
この試合で、マジソン・スクエア・ガーデン初見参のスタン・ハンセンさんは舞い上がっていたようです。
その結果、雑な技を連発してしまい、ブルーノ・サンマルチノさんの首を骨折させてしまいます!(実際は重度の頚椎捻挫)その技こそ ウェスタン・ラリアット であったと言われていました。
言われていましたというのは、【プロレス技一覧】ボディスラムはパワーの証 #8 でも紹介した通り、実は骨折の原因はウェスタン・ラリアットよりも前に放った ボディスラムが原因であったと本人が明かしたからです。
この話には後日談があって「首を折った技はウェスタン・ラリアットにしよう」と持ちかけたのは、なんと折られた本人である ブルーノ・サンマルチノさんだったという説があります。
そして、この戦略は大成功し、新日本プロレスへ登場すると瞬く間に大人気レスラーになっていきました。
当時のニックネームはアメリカでは”クラッシャー(壊し屋)”、日本では”ブレーキの壊れたダンプカー”でしたね。
その暴走ファイトとブルロープにテンガロン・ハット、そして人差し指と小指をたてて天高く突き上げるテキサス・ロングホーンと「ユース!(Youth!=俺たち若者の時代だ!)」の掛け声は当時のプロレスファンを完全に虜にしました。
ちなみに、この掛け声は数年前まで「ウィー!」だと勘違いされていました。
私も思いっきり勘違いしてましたよ(笑。
もう一つ勘違いといえば、当時は「ウェスタン・ラリアート」という表記だったのも、オールド・ファンには懐かしいんじゃないかな。
さらに言えば、テキサス・ロングホーンの手の形は Youthの「Y」を象ったものだと言うことです。
現在の姿
その後は「猫も杓子もラリアット」と言われてしまうくらいに大流行することになります。
あまりにも使い手が増えてしまったお陰で、現在ではフィニッシュ・ホールドとして使っている選手は数えるくらいになってしまいました。
現在、明確なフィニッシュ・ホールドとしている選手は以下のとおりです。
”剛腕継承”小島聡 選手(新日本プロレス)
”豪腕”潮崎豪 選手(プロレスリング・ノア)
”ウェポン・イン・50cm”クワイエット・ストーム 選手(全日本プロレス)
”我道驀進”鷹木信悟 選手(DRAGON GATE)
”筋肉獣”サイバー・コングこと吉田隆司 選手(DRAGON GATE)
”ワイルドアニキ”征矢学 選手(W-1)
”ワイルドハート”大森隆男 選手(全日本プロレス)
多分、この7名だけです。
他はつなぎ技としてしか使ってないと思いますね。
面白いのがこの中で「ウェスタン・ラリアット」を名乗っているのは 小島聡選手だけなんですよね。(笑
ちなみに”革命戦士”長州力 選手は現役とはいえ定期的な試合を行っていないのでここでは外しました。
そうそう、長州力 選手で思い出しましたけど、ラリアットと呼ばれる技には当て方が2種類存在します。
アックス・ボンバーのように腕を巻き込む形は別にするとして、いわゆる ハンセン型、長州型というタイプに分かれます。
ハンセン型
当てる部分は腕というか肩口に近いです。
そして腕は「下から上に向かって」振り抜きます。
長州型
当てる部分はヒジから手首に近いです。
そして腕は「上から下へ向かって」振り下ろします。
分かりやすい違いですよね。
派生技
一体どこまでを派生といっていいのやらという位に派生しまくってます。
なので、名前だけ変わっているようなものは全て除外します。だって、そんなのまで載せてたら無限にでてきますからね。
アックス・ボンバー
”超人”ハルク・ホーガン さんの得意技です。
現在は 大森隆男 選手が形がちょっと違いますが唯一の使い手ですね。
本来はは相手をロープに振ると同時に自分も反対側のロープへ走り中央で交錯するタイミングで仕掛けていましたが、大森隆男選手はリキ・ラリアットタイプで自分から走っていくパターンが多いですね。
ちなみに ハルク・ホーガン さんは新日本時代にフィニッシャーとしていましたが、アメリカに戻って ハルク・”ハリウッド”・ホーガン になってからはフィニッシャーとして使うことはほとんど無くなりました。
なんででしょうね?この辺りはちょっと詳しくないのでだれか教えてください。
新日本プロレス時代は「アックスボンバー!」と叫んでから決めていました。
これがカッコよくて私は大好きでした。
”伝説の超人”ハルク・ホーガン というLPレコードを購入するくらいに好きでしたよ。
それとよく言われるのが「アックス・ボンバーはヒジを相手の顔面に叩きつける」という部分です。
確かに当初はその通りなのですが、後期になると腕で首に巻き込むような形へと変化しています。
◯◯ボンバーという名称の使い手のラリアットは全てこの巻き込む形のものだというのも面白い所です。
このアックス・ボンバーの前後期の分かれ目は第1回 IWGP決勝戦ではないかと思っています。
あの”燃える闘魂”アントニオ猪木 失神事件の時にロープ越しに放った1撃も試合中に放った1撃も確かにヒジを叩きつけるタイプだったと記憶しています。
クローズライン(クロスライン)
こちらは海外での呼び名と言われています。
クロスラインはタッグチームの技でふたりで手をつないで、繋いだ部分を相手の喉元へ打ち付ける感じの技です。
おそらくそれと区別するために伸ばしたのではないかと思われます。
CROSS(交差) と CLOSE(終了) という意味なんでしょうかね?。
形はウェスタン・ラリアットそのものですし、スタン・ハンセンさんが アメリカン・フットボールにある同名の技(クローズライン)が原型だと明言してます。
(2017/11/23:追記)
読者の方から教えていただきましたが、Clothes line(洗濯物を乾す紐)のことだそうです。
確かにポールや木の間に渡した紐に見えるけど・・・うーん、かっこわるい(笑
ジャンピング・ネックブリーカー・ドロップ
これは”東洋の巨人”ジャイアント馬場 さんが一時期得意技として使用していました。
走り込んで、自分の腕を叩きつけるというよりは首に引っ掛けてそのまま倒すと行った形です。
これも形が2種類あります。
少し手前から飛び込むように決める形 と 交錯する瞬間に首を引っ掛けて倒す形 です。
ジャイアント馬場さんは後者でしたから、ランニング・ネックブリーカー・ドロップとも言われていました。
これがさらに派生すると ”100年に1人の逸材”棚橋弘至 選手の スリングプレイドになります。
(2017/11/23:追記)
読者さんからの情報で、この技の方が先に公開されていたものと言うことで、記事からは削除しておきます。
動画はジャイアント馬場さんの有志を見たいのでそのままにしておきます。
改めてこの技はしっかりと紹介しますね。
フライング・ラリアット
シングル用というよりはタッグマッチ用といった感じが強い技です。
相手の正面からジャンプして頭から飛び込むようにぶつかって行き当たる瞬間に腕を振り抜くといったやり方です。
これをパートナーが肩車している相手に向かってコーナーから使うと”暴走戦士”ロード・ウォリアーズが使っていた ダブル・インパクト という連携技になります。
単発で使用する場合もありますが、いまいちインパクトに掛ける感じがします。
フライングショルダータックルの方がインパクトありますね。
スライディング・ラリアット
”STONE PITBULL”石井智宏 選手がよく使う、長座の状態になっている相手に向かって、勢い良く走り込んで野球のスライディングのように滑り込みながら放つやり方です。
スピード感があり、見た目のインパクトもあってなかなかカッコいいラリアットの使い方です。
大森隆男 選手もよく使ってますね。彼の場合はアックス・ボンバーですけどね。
レイン・メーカー
プロレス界にカネの雨を降らせ続ける ”レイン・メーカー”オカダ・カズチカ 選手の技です。
形で言えばショートレンジ型といえるのかな?相手の腕を後ろから捕まえて、コマを廻すように相手を回転させて振り向かせソコにラリアットを叩き込むというものです。
この技でIWGPヘビー級のベルトを2年近く(2017/11現在)防衛し続けています。
凄いよね。
自分のニックネームから取った技だけあって、問答無用のフィニッシャーとして使用していますね。
いわゆる 長州型の叩きつけるラリアットですが、オカダ・カズチカ 選手の高身長で行うため衝撃が逃げずにズッシリと相手の首元に突き刺さります。
丁度、打ち下ろすローキックを首に受けるような感じでしょうかね。
って、自分で書いてみてゾッとしましたよ。
コレばっかりは打ち下ろしのローキックを食らった人じゃなきゃわからないと思います。
まとめ
WWWF世界チャンピオン ブルーノ・サンマルチノ さんの首を折ったことで一躍メジャーな技へとなっていったウェスタン・ラリアットですが、あまりにも使う選手が増えすぎてしまい、一時期はファンからも選手からも「ラリアットプロレスはもういい」などと言われてしまうこともありました。
しかし、その魅力には麻薬のような中毒性があるのは今も変わりません。
わかりやすく、真似しやすい、しかも見た目がカッコいい なんてなかなかありませんよね。
しかし、その本来の凄みを今に伝える選手は本当に少ないです。
小島聡選手でさえ今では非常に雑な使い方をするようになってしまい、ちょっと残念です。
相手をロープに振ってリング中央で「ドスン!」という衝撃が観ている側にも伝わってくるような「本物のウェスタン・ラリアット」をしっかりと蘇らせて欲しいですよね。
あ、真似しやすいからってむやみに使っちゃダメですよ!。
首を鍛えていない素人では本当に頚椎とか痛めかねないですからね!。
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その昔、クロスライン(物干し竿)の周りを子供達が走り回ってる時に子供が物干し竿に首を打ち付けて、すっ転ぶことが多かったそうです。海外では竿というより、垂れ下がった紐が多いそうですが、それを首に当ててしまって転ぶ所からフットボールで使われていたけどあまりにも危険な為禁止になったそうで、ハンセンはそれをプロレスに使ったと聞いたことがあります。