プロレス技は千差万別です。
使い手が変われば、同じ技でも名前が変わります。
ウェスタン・ラリアットなんてその最右翼ですね。
さて今回紹介するプロレス技はこちらになります。
ジャーマン・スープレックス・ホールド
(GERMAN SUPLEX HOLD)
歴史
前回【プロレス技一覧】バックドロップは危険な香り#5 で取り上げたバックドロップ と並び称されるプロレスの代名詞的な技です。
創始者はご存知 ”プロレスの神様”カール・ゴッチさんです。
原型はアマレスの反り投げ(スープレックス)のようで、それをブリッジで固めるような形に改良しプロレスに持ち込んだと言われています。
カール・ゴッチさんは当時でも180kgを超えていたと言われる モンスター・ロシモフさんをこのジャーマン・スープレックス・ホールドで投げきっており、世界中に衝撃を与えました。
残念ながら足がロープに掛かっており、3カウントが無効になり試合には負けてしまったんですけどね。
1971年(昭和46年)の国際プロレスで行われたIWAワールドリーグ戦でのことですね。
さて、モンスター・ロシモフって誰?って人お教えしますね。
身長223cmの”人間山脈”アンドレ・ザ・ジャイアントさんです!ヨーロッパ時代のリングネームがモンスター・ロシモフだったんですね。
この時のカール・ゴッチさんは、一度引退してから復帰しており既に49歳(!)になっていましたから驚きです。
こんなアラフィフいたら怖いですね。
日本初公開は1961年(昭和35年)4月の公開練習だったそうですから、私が生まれる8年も前ですね。
技の形としては、相手の背後から両腕で腰のあたりをクラッチしたまま後方へ反り投げを行い、そのままブリッジでホールドして3カウントを奪うという技です。
見た目のあまりの美しさから「プロレスの芸術品」とま言われる事がありますが、一方で和名が「原爆固め(投げ)」だったりすのは、ちょっと謎ですね。
また、ジャーマン・スープレックス・ホールドが「原爆固め」と呼ばれてしまったために、これ以降に現れる「後方に反り投げ後ブリッジでホールドする技」は全て”◯◯原爆固め”と呼ばれるようになっていきました。
誰が名付けたのかは正直はっきりしません。
一節では、この公開練習をみた新人の新聞記者が先輩記者へ技名を報告した際に、英語ではわからないと言われ咄嗟に和名として報告したのが始まりだと言われています。
(2017/09/09追記:田中寧さんからの情報で元・東京スポーツの故・桜井康雄さんだそうです!)
咄嗟にこの名前を報告できたその新人記者のボキャブラリーに賞賛を贈りたい、だってこんなにピッタリな技名なんて他にある?あったら教えてほしいもんです。
世界で唯一の被爆国である日本で昭和40年代にこの名前を持ってくる所なんかは相当勇気があると言わざるを得ないわけですが、それ系の団体からの抗議はなかったみたいですね。
このジャーマン・スープレックス・ホールドですが、日本人としての初披露は ヒロ・マツダさんです。裸足(ベアフット)で闘う日系人レスラーとして海外でも人気がありました。
ブリッジも美しく日本人の第一人者と言っていいと思いまし、カール・ゴッチさんのお弟子さんですからね。
しかし、これまで歴代の使い手で誰が一番なのか?という話になってくると非常に難しくなります。
名手と呼ばれた選手はたくさんいますが、やっぱり最高の使い手といえば アントニオ猪木さんになるんでしょうね。
(伝説のストロング小林戦での一撃!)
ジュニア好きの私としてはタイガーマスクを推したい所なんですが、タイガーマスクのジャーマン・スープレックス・ホールドは腕のロックが甘いことが多くて名手というのはちょっとねって感じがあります。
なのでやっぱり歴代最高のジャーマン・スープレックス・ホールドの使い手は アントニオ猪木さんということになります。
現在では見慣れた感じがあるこの技ですが、フィニッシュホールドとしての輝きを見せてくれているのはおそらく 大日本プロレスの関本大介さん じゃないかな?と思っています。
現在の姿
”芸術品”とまで言われた ジャーマン・スープレックス・ホールド ですが、使い手が増えることで同時に粗悪な使い手も多くなり、必殺技としての輝きを失っていきました。
その後【プロレス技一覧】スクリュードライバーよりもスタイナーらしいのは?#2 で紹介したように投げっぱなしで放り投げる事でその迫力を一旦増した後、現在では”つなぎ技”になってしまった感じがあります。
正直に言って、現在のプロレスではジャーマン・スープレックス・ホールドで決まると思うシーンは少なくなってきました。
もちろんその威力が落ちたというよりは、受け身の技術が発達したことと、マットの改良がその要因としては非常に大きい部分を占めています。
なので威力を増すためには、より危険な落とし方をという発展をしていくようになります。
その結果、きれいなブリッジで高さと速さを兼ね備えた使い手が失われていきました。
そんな中でも、前出した 関本大介さん のジャーマン・スープレックス・ホールドへのこだわりには賞賛を贈りたいと思います。
(腕のクラッチがしっかりして筋肉質なのにきれいなブリッジです)
もっと色んな人に見て欲しいですよね。
新日本プロレスのマットにあがらないかな?
派生技
数え上げたらキリがないくらいあります。
一番多いんじゃないかな?
フルネルソン・スープレックス・ホールド
飛龍原爆固めと呼ばれる 藤波辰爾さんの必殺技でした。
過去形なのは、当時あまりに危険すぎるということで自ら封印してしまい、解禁するころには他にもっと上手い使い手が溢れてしまっていたことが原因です。
藤波辰爾さんはヘビー級転向後はブリッジがあまりキレイではなくなったため必殺の威力も落ちてしまいました。この写真はキレイに決まった方ですがもっと反っていいです。
タイガー・スープレックス・ホールド
最初が龍なら次は虎です! 猛虎原爆固めと言われた タイガーマスクさんの必殺技です。
でも、オリジナルではありません。
オリジナル原型は オースイ・スープレックス・ホールド といいます。
アル・コステロさんが創始者ですね。名前の由来はアル・コステロさんが当時オーストラリア在住だったからということからです。
オースイ = オーストラリア人 という事ですね。
別名で オージー・スープレックス・ホールドとも呼ばれますが、こっちのほうが私達にはオーストラリア式なんだなってわかりやすいですよね。
ただし、決まった形こそスープレックスですが、実はローリング・バッククラッチ・ホールド(後方回転エビ固め)に近いです。(14分過ぎに出ます!)
(2017/9/9 田中寧さんより情報提供をいただき加筆・修正)
ノーザンライト・スープレックス・ホールド
ちょっと形は変わりますが、これも 北斗原爆固めと呼ばれますから派生に加えました。
ジャーマン・スープレックス・ホールドとは真逆に正面から組んで投げる技で 馳浩さんが必殺技にしていました。
現在では、真壁刀義さんが10蓮パンチ~高笑い~ノーザンライト・スープレックスというムーブで使う以外にこれといった使い手は見当たりませんね。
非常に見た目がキレイで説得力のある大技なので誰か後継者が出てきてほしいですね。
エベレスト・ジャーマン・スープレックス・ホールド
完全に固有の技にしたのが 高山善廣さんですね。
形は至ってオーソドックスなジャーマン・スープレックス・ホールドですが、高山善廣さんの高身長(196cm)から繰り出されるその豪快さから命名されました。
まさに”唯一無二”の技といえます。
ジャパニーズオーシャン・サイクロン・スープレックス・ホールド
(ネギオリヴァーさん(@beerbearbeat)の写真をお借りしました。
日本海式竜巻原爆固めとなるらしいですが、豊田真奈美さんの考案した必殺技ですね。
女子プロレスは男子に比べても非常に奇抜な技が多く、これもその一つですね。
相手の両腕をクロスさせて掴み、さらに肩車をしてからブリッジで投げるという破天荒な技です。
女子の方が身体が柔らかく、腕も細いために可能になった技といえるかもしれませんね。
クロイツ・ラス
最後は2段式ジャーマン・スープレックス・ホールドといえる ケニー・オメガさん の技です。
先ほどのジャパニーズオーシャン・サイクロン・スープレックス・ホールドとは逆に肩車の状態から始まります。
肩車から相手を目の前にポンと降ろすのですが、その途中で腰をクラッチ、空中にいる状態の相手をジャーマン・スープレックス・ホールドで投げるという技で、英語表記だと「Croyt’s Wrath」になるそうです。
「クロイトの怒り」という意味になるわけですが、ゲームオタクのケニー・オメガさんの事だから、片翼の天使みたいにゲームの技名かと思いきや、なんと「ゲーム実況者のクロイツさんの怒り」を表現しているのだそうです。
有名なゲーム実況者で感情の起伏が激しい方だそうですから興味があったら検索してみてください。
この他にもスパイダー・ジャーマンとかダルマ式ジャーマン・スープレックス・ホールドとか、クロスアーム・スープレックス・ホールドとかマヤ式、ローリング式、起き上がり小法師式(ロコモーション)、ハーフネルソン、スリーパー、コブラクラッチにテキーラサンライズなどなど数え上げればキリがない程に派生技は出てきます。
それだけメジャーで誰もが憧れる技ということになります。
まとめ
【プロレス技一覧】ブレーンバスター?バーティカル・スパイク?#3 で紹介したブレーンバスターと違い7色のスープレックスの代表とされるジャーマン・スープレックス・ホールドですが、中でも触れた通り、名手と呼ばれる選手がいなくなって久しくなります。
キレイに決める選手がいないわけではなく「これが出れば試合が終わる!」そう思わせてくれる選手がいないんですね。
その意味でも 関本大介さん は非常に貴重なジャーマン・スープレックス・ホールドの使い手と言えますね。
私が見た中で印象に残っているジャーマン・スープレックス・ホールドは実はありません。
アントニオ猪木さんはすでにピークを過ぎており、そもそも使用していませんでした。
それ以降、前田日明さんとかもいましたが正直、スープレックス系は上手いとは言えないレベルでしたし、蹴り技の方がインパクトがありましたからね。
ジャーマン・スープレックス・ホールドをフィニッシャーにする選手は 本当に 関本大介さん だけになりましたね。
現在のマットの改良や受け身の技術向上を見れば致し方ないのかもしれませんね。
でも、この技が「プロレスの芸術品」であることには変わりなく、その派生も終わることはないと思っています。
やっぱカッコいいですもんね。
それでは!
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